戦後に生まれた私たち日本人にとって、
アメリカが世界で権力を握っていること=「普通」で、
何の違和感もない人が多いのではないでしょうか?
生まれた時から、アメリカの影響力は世界中に及んでいて、
第二次世界大戦でアメリカに敗北した日本は、当然のようにアメリカをサポートしている。
世界の基軸通貨は米ドルで、アメリカの軍事力は世界最強。
そして、アメリカは世界一の経済大国であるということ。
アメリカが世界で権力を持たない日が来るなんてあり得るのだろうか?
そう疑ってしまうほど、アメリカが覇権国として地位を維持し続けるものだと思っていませんか。
実際はどうでしょう?
そんな想像していなかった人もいるかもしれませんが…
アメリカが衰退する時がきます!
アメリカが覇権国家でなくなる未来が来る!
私がそう考える理由についてお話しします。
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覇権国について
覇権国とは
まず「覇権国」とは、
国際的な政治・経済・軍事的な力を有して、他の国々に対して優位に立ち、世界の主導権を握っているとされる国のことを指します。
歴史的には、古代ローマ帝国や中国の秦や漢のような帝国、近現代ではオランダ、イギリスやアメリカ合衆国など、その時代において政界の経済の中心となった国が覇権国として挙げられることが多いです。
覇権国は、経済や軍事力、文化的な影響力などを背景に、他の国々に影響力を及ぼし、国際政治の舞台で主導的な役割を果たすことができます。
まさに今の米国ですね。
覇権国家になるために必要なこと
覇権国家になるために必要なことは…
強い軍事力:覇権国家になるためには、強力な軍事力が必要です。軍事力は、他国に対して威嚇力を発揮することができます。
強い経済力:経済力は、国家の繁栄に欠かせないものです。覇権国家になるためには、経済力の強化が必要です。
強い技術力:技術力の向上は、国家の競争力を高めるために必要です。覇権国家になるためには、常に最先端の技術を開発することが求められます。
文化の普及:国家の文化が世界的に広がることで、その国の影響力が拡大します。覇権国家になるためには、自国の文化を世界に広めることが必要です。
強い外交力:覇権国家になるためには、国際社会との良好な関係を築くことが必要です。そのためには、外交力の強化が不可欠です。
覇権国の歴史
覇権国の概念は、古代から存在しています。
歴史的には、古代ギリシャのアテナイや古代ローマ帝国、中世ヨーロッパのスペイン帝国が挙げられます。
過去の覇権国であった国を順に紹介します。
近代で覇権国になった国…
17世紀 オランダ
オランダは、17世紀に商業的な覇権を確立した国です。
当時、オランダは東インド、南アフリカ、南アメリカなどに植民地を持ち、東西交易を行う海洋帝国としての地位を築きました。
商人や船主による独立的な商業活動により、大航海時代における世界の商業の中心地の一つとなり、世界最初の株式会社であるオランダ東インド会社を創設しました。
ヨーロッパ諸国の植民地拡大にも重要な役割を果たし、世界の歴史に多大な影響を与えた覇権国となりましたが、
しかし、
イギリスがナビゲーション法を制定したことなどによる経済的な競争力の低下や
イギリスやフランスなどとの戦争の財政負担、宗教対立の激化などで
政府の機能不全が生じたことによる政治的な問題、海外植民地の喪失などにより、
オランダは17世紀後半に経済的に衰退し、覇権国としての地位を失っていきました。
19~20世紀 イギリス
イギリスは、19世紀に工業革命を起こし、産業革命とともに世界的な覇権国としての地位を確立しました。
三角貿易システムなどにより富を蓄積、海軍力を強化して海外植民地を獲得し海外領土を拡大していきました。
しかし、2度の世界大戦により、イギリスは戦争には勝ちましたが戦費や戦争の被害により疲弊、
第二次世界大戦後は植民地の多くが独立したことや国内政治の混乱により国力が弱くなっていき
覇権国の地位を失いました。
21世紀~現在 アメリカ
アメリカ合衆国は、第二次世界大戦後に世界的な覇権国としての地位を確立しました。
戦後、戦場とならなかったアメリカは、経済、科学技術、軍事などの面で急速に発展、そして、自由民主主義や市場経済の価値観を世界に広めました。
そして現在に至るまで覇権国の地位を築いています。
なぜ米国は世界の覇権を握れたのか?
アメリカが世界の覇権を握れた要因はいくつがありますが、
まず、石油や天然ガスの埋蔵量が世界最大規模で豊富な天然資源を有していたことです。
そして次に、自由民主主義の価値観を掲げ、市場経済を急速に発展させたことです。
多くの発明や技術革新を生み出し、これが経済発展の原動力となりました。
このことにより、第二次世界大戦後、世界の産業・経済・金融の中心地となり、国際的な覇権を確立していきました。
多くの国々がアメリカの援助を受け、アメリカの技術や文化が世界に広まりました。
冷戦時代には、アメリカがソ連との対立に勝利し、世界的な覇権国としての地位を確立、
現在に至るまで世界の指導的立場を占めています。
覇権国家が衰退を避けられない理由
スペイン、オランダ、イギリスと覇権国家は入れ替わっており、一貫してその地位を維持し続けた国はありません。
国際政治学における理論の一つ、「パワー・トランジション論」によると、
覇権は永続的ではなく、覇権国家の変化は、力のバランスが変化することによって引き起こされる。ある国が軍事的、経済的な力を増強し、その力が覇権国家の地位を持つ国々と接近すると、力のバランスが変化し、新たな覇権国家が誕生する。
とされています。
また、近現代の国際関係について唱えられた理論、「覇権循環論」によると、
概ね16世紀以降、世界の政治・経済・軍事他覇権は欧米を中心にある特定の大国によりその時代担われ、その地位の循環を繰り返すとする。
とされています。
世界の歴史をみると、100年周期で覇権国家の交代が繰り返されており、およそ100年周期で覇権国は変わるといわれています。
覇権国家は成長するにつれ、経済や軍事力の維持・拡大に必要なリソースの枯渇や国内の政治的問題が発生します。
また、国内の問題にも直面することで、政府の機能低下や経済成長の鈍化などを引き起こし、国家が将来的に衰退する可能性を高めます。
他にも
国際的な環境の変化や、新たなテクノロジーの登場などの変化に迅速に対応できなかった覇権国家は、その地位を維持することができず、衰退していきます。
アメリカの衰退について
アメリカは、20世紀を通じて経済的・軍事的な覇権国家として、世界の中心的存在としての地位を確立してきました。
しかし、近年ではその地位が揺らぎ始めており、アメリカの衰退が懸念されるようになっています。
- アメリカの内部的な問題が影響しています。
- 経済格差の拡大や、社会的な不平等、人種問題、移民問題、そして政治的な分断などが深刻化しており、国内の安定が揺らぎつつあります。
- 教育水準の低下や、技術革新への投資の不足なども問題となっています。
- アメリカの対外債務総額が世界トップになっています。
- アメリカの対外債務総額は1月末時点で30兆ドルに達したことが明らかになったとされています。2位のイギリスが9兆ドルであることを考えると断トツで世界トップの対外債務額です。2021年第4四半期(10~12月)の名目GDP(年率換算)の約1.3倍の規模で、財政悪化が引き続き急速に進んでいます。引用:米連邦政府の公的債務残高が30兆ドルに、名目GDPの約1.3倍規模(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)
- アメリカの外交政策も失敗が目立ち始めています。
- イラク戦争やアフガニスタン戦争の長期化による疲弊や、北朝鮮やイランとの対立などが続く中、アメリカの軍事力が限界に達しているとの指摘もあります。
- 戦後アメリカは「世界の警察」として世界中に米軍基地を持ち、世界の安全保障を担ってきましたが、その軍事費が膨大になったことから、オバマ政権以降その軍事費を縮小しはじめました。2021年、バイデン大統領によるアフガニスタンからの撤退が完了し、武装勢力タリバンが権力を掌握。これにより、外国の紛争に介入する「世界の警察」としての役割の本格的な終わりとなり、アメリカの軍事力の世界への影響力は弱くなりました。
- 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の離脱により、経済的な影響力も低下しています。
- 中国やロシアの台頭もアメリカの衰退を加速させています。
- 中国は急速に経済力を増強し、軍事力も充実させています。
- 中国はイランとサウジの外交正常化を仲介し、中東地域で経済面以外でも役割を担いました。このことにより中東へのアメリカの影響力は低下しました。
- 2021年には中国企業ByteDanceが運営するTikTokがアメリカ企業Googleが運営するYouTubeの動画平均再生時間を超えており、中国企業がアメリカ企業を抜きつつあります。Metaの株価暴落などアメリカ企業の勢いが弱まっています。
- ロシアはウクライナ戦争などを巡り、アメリカとの対立を深めています。もしこのままウクライナ戦争が続き、状況が苦しくなったロシアが中国の完全支配下に置かれるようになれば、中国の影響力はさらに拡大するでしょう。
過去覇権国であったイギリスが植民地経営と世界大戦の出費により債務国になり国力が弱くなった状況は、今のアメリカが対外債務総額が世界トップである状況に似ています。
こうした状況から、アメリカが世界の覇権国家としての地位を維持することは難しくなってきています。
約100年サイクルで覇権国家の衰退が訪れるとされており、アメリカがそのサイクルに入った可能性があります。
今後、アメリカがどのような戦略をとって地位を維持するのか。
その戦略次第で覇権国が変わる日が早まるかもしれません。
次の覇権国候補
次の覇権国候補について、今後の国際政治の舞台で注目すべき国々があります。
中国
中国は、経済的にも軍事的にも大きな力を持つ国として、最有力の覇権国家候補と言われています。GDPや軍事力の面でアメリカに次ぐ存在感を示し、世界中で積極的な投資活動を行っています。
また、一帯一路構想をはじめとしたグローバルなプロジェクトを展開するなど、地政学的にもアメリカを圧倒しています。
ただし、人権問題や民主主義の不在など、アメリカが重視する価値観には合致しないため、国際社会の信頼を得ることができない問題もあります。
インド
インドは、アメリカや中国に次ぐ人口を持ち、経済成長が著しく、IT産業などを中心に新しい産業分野も育成されています。
2022年末には中国の人口を上回りました。しかもその人口構成は若年層が多く、2050年にはインドの人口は16億人になるといわれています。
また、戦略的に重要な場所に位置し、アジア地域においても存在感を増しています。
ただし、経済格差が大きく、貧困層の生活水準が低いことが社会問題となっており、国家としての課題も残っています。
まとめ
約100年サイクルで覇権国家の衰退が訪れるとされているため、覇権国がアメリカから交代してもおかしくない時期がきているといえます。
覇権国の座を狙っている中国、人口が増え続けているインド、と次に覇権国になり得る国も存在します。
徐々にアメリカの覇権国としての力が弱まりつつあります。
だからこそ、
アメリカがこの先も世界を牽引し続けると思い込み、アメリカのみに集中投資をすることは危険
です。
アメリカが衰退したときあなたの資産はどうなりますか?
資産形成をしていく上で、長期で投資をし続けることが大切です。
長期的にみて、アメリカが覇権国でなくなる日がくる可能性があるなら、アメリカだけに投資をするべきではありません。
30年、50年後は、あなたが想定している範囲外の状況になっているかもしれません。
まさかアメリカが衰退するなんて有り得ないなどと短期的に物事を考えるのではなく
長期的に考えて資産形成をしていきましょう。
この記事を書いた人
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現役パラリーガル
都内大手国際法律事務所勤務
ファイナンシャルプランナー
投資歴10年以上
米国株/投資信託/積立NISA/iDeCo
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