6月20日に大手損保の東京海上の株価が急落したんだって?
一時5%以上の株価が下がる場面もあったらしいけど、何があったの?
株価急落の原因は、下記のニュースが報道されたためです。
私鉄グループの東急に対する企業向けの火災保険で、価格調整の疑い、つまりカルテルの疑いが報じられたんです。そして、金融庁からの報告徴求命令が出されたんです。
価格調整?カルテル?
金融庁からの報告徴求命令...
なんか難しそうだなぁ...
ということで、このニュースについての解説をさせていただきますナカウラです。
この記事でわかることは、下記のとおりです。
✓どういった背景、経緯なのか
✓東京海上の業績に与える影響について
それでは、順番に解説しますね。
東京海上など大手4社で保険料の調整の疑い
出典 東京海上日動が主導する形で、大手損保4社による企業向け共同保険での保険料事前調整が発覚。対象となった東急が「見抜く」。損保寡占体制の弊害を露呈(RIEF) | 一般社団法人環境金融研究機構 (rief-jp.org)
6月20日の日本経済新聞で、下記のニュースが報道されました。
引用 損保大手4社、企業向け保険で価格調整か 金融庁が報告命令 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
東京海上が、保険料を調整したの?
事前に各社で情報を共有したのは、悪いことなの?
高い保険料を提示したことがよくないんだよね?
一言でいうと、要するに、
「東京海上が他の損保会社と共同で、東急に不当に高い保険料を提示した可能性がある」
ということです。そこで、金融庁が報告徴求命令を出したという経緯です。
カルテルとは
出典 こんなコトが起こると暮らしがあぶない! 企業の違反行為 | 公正取引委員会 (jftc.go.jp)
カルテルとは、Wikipediaによると下記のとおりです。
カルテル(独: Kartell, 英: cartel)または企業連合(きぎょうれんごう)とは、企業・事業者が独占目的で行う価格・生産計画・販売地域等の協定である。また、公共事業などにおける競争入札の際、複数の入札参加者が入札価格や落札者などを事前協定しておく談合と呼ばれる商慣習もカルテルないし「不当な取引制限」であり、独占禁止法に抵触するだけでなく、刑法の談合罪(刑法96条の6第2項)で処罰される。
引用「カルテル」(2023年3月30日 (木) 11:10 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』カルテル - Wikipedia
今回は、消費者側の東急が「過去の実績よりも、やけに高い保険料を提示された」ので問題としたわけです。
東京海上が主幹事を務めた「共同保険」への問題です。
共同保険には、下記3社も関わっています。
✓三井住友海上火災保険
✓損害保険ジャパン
✓あいおいニッセイ同和損害保険
共同保険とは
共同保険って何なの?
1つの契約をいくつかの保険会社で責任を負うようにして、リスクの分散をすることです。
リスクの分散をする理由は、損害を補償する規模が大きすぎる場合は、1社で契約を引き受けると、めちゃくちゃ高いリスクになるので。
今回は、相手が東急グループなので、保険対象が鉄道以外にも保有する不動産が多く、すべて1社で補償するのは不可能です。
だから、他社とのつながりが重要になるのですが、誤った対応がされていたということ。
金融庁から報告徴求命令が出されたあとの流れ
引用 保険会社向けの総合的な監督指針 : 金融庁 (fsa.go.jp)
東京海上は、今回のカルテル疑いについて、金融庁に下記の報告をしなければなりません。
✓事実認識
✓発生原因分析
✓改善・対応策その他必要と認められる事項
東京海上からの報告後、行政処分をする場合には、原則として1カ月以内を目途に行われるとのこと。
少なくとも1カ月以上は、行政処分が出るかどうか、株主は気になりますよね。
行政処分とは
行政処分には、下記があります。
✓業務改善命令
✓業務停止命令
✓免許取り消し
業務停止命令以上の処分があると、業績にめちゃくちゃ影響を与える可能性ありです。
一方、金融庁が「重大な問題が発生していない」とした場合は、改善対応策のフォローアップを行い、行政処分はありません。
保険料が上がっていく理由もある
ここまでの内容だと、「東京海上や大手損保3社が、高い保険料を東急に一方的に突きつけた」と感じます。
ただ実は、保険料がある程度上がっていくのにも、理由があります。
下記は、東京海上グループが今年打ち出した経営戦略で、想定リスクをまとめた表です。
出典 東京海上グループの経営戦略 Microsoft PowerPoint - IR_conference_FY2023_j.pptx (tokiomarinehd.com)
まとめると、下記の理由です。
✓大口・中口事故の増加
✓自然災害の増加
✓再保険コストの上昇
仮に大口の事故があると、一瞬で赤字になる可能性も...
地球温暖化で自然災害も増えています。
つまり、今まで通りのやり方だと、保険会社はハイリスク・ローリターンになるわけですね。
再保険って何かな?
大口保険契約のリスクを分散するために、保険会社が別の保険契約を結ぶことです。
出典 再保険の概要 | トーア再保険株式会社 (toare.co.jp)
大口の事故が起こると、高額な保険金の支払をしないといけません。
だから、損害保険会社は、安定した経営をするために、他の保険会社に責任の一部をもってもらいます。
最近は、再保険のコストも上がってます。
つまり、そもそもの保険料率を引き上げないと、事業としてやっていけなくなるという側面もあるのです。
もしカルテルと認定されたらどれくらいが課徴金として徴収されるのか
正直なところ、計算は難しいです。
ただ、昨年の電力カルテルでは、中国電力、中部電力、九州電力の3社などに総額1,000億円以上の金額が課徴金として徴収された例もあります。
引用 公取委、22年度課徴金1019億円 電力カルテル受け最高 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
ただ、東京海上の今期の純利益は5,300億円を予想しています。
引用 東京海上の2024年3月期、純利益40.8%増 予想平均上回る - 日本経済新聞 (nikkei.com)
仮に、先ほどの3社の合計の1,000億円が東京海上1社に対して、課徴金として徴収されても、東京海上が経営危機とはならないはずです。
まとめ
今回の記事をまとめます。
✓金融庁からの報告徴求命令に対する対応によっては、業務停止命令以上の処分があると、業績にはめちゃくちゃ影響を与える可能性もある
✓損害保険会社にも、保険料を上げないとやっていけなくなる理由もある
✓もしカルテルと認定された場合、過去に課徴金が1,000億円を超えた実例もある
✓東京海上の純利益は、今期5,300億円を予想しており、課徴金として徴収されても東京海上が経営危機とまではならないはず
今後の金融庁の対応には、ぜひ注目しておくべきでしょう!
最後まで、ご覧いただきありがとうございました!
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