2023年3月10日より映画「Winny」が全国で公開されています。
Winny事件は約20年前の話です。
特に30代以降の方にとっては、馴染みのあるワードなのではないでしょうか?
開発者が逮捕されたことから、事件の内容を詳しく知らない人からすると
Winnyって何か悪いものだったんじゃないの?
といったイメージをお持ちかもしれません。
しかし、実際にはWinny自体に何か違法性があるわけではありませんでした。
そればかりか、現在のビットコイン(暗号通貨)のブロックチェーンにもつながる、先進的な技術が使われたソフトだったのです。
資産形成とは少し離れますが、日本経済にも関わる事件だったため、詳細をこちらの記事でみていきましょう。
本記事で分かること
- Winnyとは
- Winny事件の概要
- Winnyの開発者はその後どうなったのか
- Winny事件から考えられる日本社会の闇
そもそもWinnyって何?
Winnyとは、東大大学院助手の金子勇さんによって開発された、ファイル共有ソフトのことです。
金子さんは、最初の書き込み番号「47」を2ちゃんねるの名前にしていたため「47氏」と呼ばれていたようです。
2002年5月6日、匿名掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」のダウンロードソフト版に書き込まれ、Winnyは広がりました。
利用者同士のやり取りに「P2P(ピアツーピア)」と呼ばれる通信技術が使われている点が、Winnyの特徴です。
P2Pの仕組みについて
P2Pとは、端的にいうと「ネットの利用者(端末)同士が直接つながり、やり取りを行う通信手段」のことです。
P2Pのpeer(ピア)には「仲間」「対等」といった意味があります。
通常であれば、データのやりとりは特定のサーバーを通して行われます。(クライアント・サーバーシステム)
一方のP2P(Winny)では、クライアントのサーバーを介さず、ユーザー同士で直接ファイルやデータの共有ができるのです。
現在で身近な例を挙げると、SkypeやLINEのデータ共有などでP2Pは活用されています。
P2Pのメリット
P2Pのメリットの一つに「匿名性の高さ」があります。
ネットワーク上にデータが分散しており、なおかつピア間での通信は暗号化されているため、匿名性が保たれているのです。
映画の中でも、Winnyを開発した目的を、金子さんは「匿名性を高めて告発者を守るため」といった旨のことを話しています
内部告発やリークがあった際、新聞や雑誌など特定の媒体が介在していると、何らかの形で告発者がバレてしまう可能性があります。
権力者に目を付けられてしまい、告発した者が危険な目にあう恐れがありますよね。
また、一つのサーバーで管理されているわけではないため、障害やデータの改ざんに強いというメリットも挙げられます。
デメリットについては、Winny事件の概要と一緒にみていきましょう。
Winnyが問題になった経緯
Winnyは、ソフトをダウンロードしている者同士が直接つながっているため、データを簡単に共有できるようになっています。
そのため、映画や音楽、ゲームなどが違法にアップロードされることにより、著作権の侵害が問題となりました。
今のようにサブスクがないため、当時はCDやDVDなどを購入しなければなりませんでした。
しかし、Winnyを利用すれば、無料で音楽や映像がダウンロードできてしまっていたんですね。
被害額は数十億にも及んだといわれています。
ウイルスの拡散や情報漏洩などが起こるデメリットも当時のP2P(Winny)にはありました
警察や自衛隊、裁判所などの機密情報がWinnyから流出したなんてことも…
違法にアップロードした人が、著作権侵害の罪で逮捕されました。
著作権違反を手助けしたとして、
Winny開発者の金子勇さんも2004年に逮捕されてしまったのです。(著作権侵害の幇助)
- 一審:罰金150万円有罪判決
- 二審:無罪
- 最高裁:無罪
最終的に無罪を勝ち取りますが、7年もの歳月がかかってしまいました。
その間、金子さんはプログラミングが行えませんでした
金子さんの逮捕が不当だったのは、
「高速道路にて交通事故があったとして、高速道路を作った人が悪いのか?」
「包丁による刺殺事件があったとして、包丁を作った人を罪に問えるのか?」
といった例え話がよく用いられます。
上記と同様、法律を犯したのはあくまでも違法アップロードした者であって、Winnyを開発しただけの金子さんとは全く関係がないのは明らかです。
映画では金子さんが逮捕されてから裁判で無罪になるまでのことが詳しく描かれています
ハラハラドキドキの展開でした
Winnyを知っている人はもちろん、知らない人でも楽しめる内容になっていますよ
ちなみにP2P技術を用いたファイル共有ソフトは、Winny以前にもありました。
「Winnyとそれまでの共有ソフトと何が違うのか」
「違法アップロードやダウンロードについて法律はどうなっているのか」
など詳しく知りたい方は以下の動画をご参照ください。
※内容は少し難しいのですが、P2PやWinnyについて図解の方がイメージがわきやすいと思います。
Winny金子さんは殺された?Winny事件から考えられる日本の課題
2011年12月19日に無罪は確定しましたが、およそ2年後の2013年7月6日、急性心筋梗塞のため金子さんは43歳の若さで亡くなってしまいました。
死因は病気になりますが、不要な裁判で長期のストレスをかけたことから
「日本の警察が金子さんを殺したようなもの」との考え方もあるでしょう。
Winny事件から考えられること
・天才プログラマーの活動を7年間も止めたせいで、日本のIT技術発展を妨げた
⇨裁判中にyoutubeやFacebookなど海外にIT技術の先行を許した
・新しい技術を開発して何かあると、作った人が不当に逮捕される
⇨技術者の開発意欲を阻害した
出る杭を打って規制強化する日本社会が2000年代のIT産業を潰してしまったといえるでしょう。
Winnyの他に、ライブドアの堀江貴文さんが逮捕されたことも記憶に新しいです。
詳細は省きますが、今でも「なぜ堀江さんが逮捕されたのか分からない」との意見を目にします。
不正な会計処理によって、事実とは異なる決算書を提出したという「有価証券報告書虚偽記載」
とそれにより株価を意図的に操作したという「風説の流布」の2つの罪に問われた事件です
堀江さんは当時「時代の寵児」と呼ばれるほど、勢いのある若手経営者でした
その他、自動運転やドローンなど新技術の規制もいまだに強く、実装されていない現状があります。
「これまでの価値観を壊そうとすると潰される」社会のままでは、今後も日本は先進分野で遅れをとり続けることとなるでしょう。
まとめ
- Winnyは端末利用者が同等につながり、データを送受信できるソフトである
- Winnyによって著作権の侵害が横行し、それを手助けしたとして開発者(金子勇)が逮捕された
- 一審では有罪の判決を受けたが、最終的には無罪が確定した
- Winnyを開発しただけの金子さんが逮捕されるのは、いまだに疑問が残る
- 日本には「出る杭は打たれる文化」があり、先進分野で遅れをとりやすい傾向にある
ここまで、Winny事件の概要とそこから考えられる日本社会の構図を見ていきました。
私も今回の記事を書くにあたって、初めてWinny事件の詳細を知り、金子さんの無念を考えると胸が締め付けられる思いがしました。
しかし、Winnyのような題材をメディアが取り扱うようになったということは、日本の悪習の出る杭打たれる文化が、今後はある程度改善されていくのかもしれませんね。
この記事を書いた人
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ライター歴5年
これまで1000記事以上を作成
自身も資産運用を実施中
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