「失われた30年」という言葉はよく耳にするのではないでしょうか。

 しかし、「何が」失われたのか、それが「いつ」失われたのか、誰が「戦犯」なのかについて、ご存じですか?

この記事では、「失われた30年」について、「いつ」、「何が」失われたのか、そして、その「戦犯」は誰なのかを追求していきます。

画像

日本でバブル経済が発生!

 1980年後半から1990年にかけて日本ではバブル経済が発生しました。

 1985年に成立したプラザ合意をきっかけにアメリカで急激なドル安が起こり、日本では急激な円高になりました。そこで、日本政府が円高を乗り切るために政策金利(民間銀行の金利をコントロールするために国が定める金利)を引き下げると、企業の融資が増加しました。また、1980年代後半に原油価格が大幅に下落すると、企業はコストカットに成功し利益が増えました。

 この金利引き下げと原油価格の低下が引き金となって、国内で流通する通貨が増え、その増えたお金の多くは不動産投資に注がれました。そのため、不動産の価格は高騰し続け、バブル経済が発生しました。

バブル経済の発生

プラザ合意→アメリカ:ドル安 ⇔ 日本:円高

                  ↓そこで

      日本政府による政策金利の引き下げ…企業による融資の増加

                  +

             原油価格の大幅下落…企業の利益の増加

                  ↓すると

  国内で流通する通貨の増加→その大半は不動産投資へ→不動産の価格高騰

                  ↓そして

               バブル経済の発生

失われた30年の始まり・・・バブル経済の崩壊

 1990年になると、日本政府は銀行に対して土地取引への融資を抑えるよう指導し、政策金利を引き上げました。また、同年には湾岸戦争が勃発し、原油価格が高騰しました。これにより商品コストが上がり、多くの企業は利益を失いました

 人々は株や不動産の購入をやめて売却を開始し、株価が大暴落しました。その少し後に不動産が暴落し、バブル経済は崩壊しました。

バブル経済の崩壊

1990年:日本政府による政策金利の引き下げ+湾岸戦争の勃発で原油価格の高騰

                   ↓その結果

      企業の利益の減少、国民による株・不動産の購入の停止と売却

                   ↓そうすると

             株価の大暴落不動産の暴落

                   ↓ついに                

                バブル経済の崩壊

画像

失われた30年とは「いつ」なのか・・・バブル経済崩壊後の経済状況

 失われた30年はバブル経済崩壊後の1990年代初頭から2020年代初頭までのことを指します。そこで、バブル経済崩壊後の1990年から現在までの日本の経済状況を振り返ってみましょう。

平成不況(1990年~2002年)

 まずは、平成不況がありました。不動産や株価の大暴落を受けて銀行や証券会社は倒産しました。銀行は不良債権を増やさないようにするために融資条件を厳しくしました(銀行の貸し渋り)。

 その結果、企業は経営状況が悪化し、経営方針の見直しが行われました。たとえば、事業廃止やコストカットが行われ、リストラ・減給をせざるを得なくなりました。そして、失業率が増加しました。また、消費税の引き上げやアジア通貨危機などが起こったことから、消費の低迷が生じました。

いざなみ景気(2002年~2008年)

 その後、いざなみ景気として景気拡張期が続きます。しかし、この間の実質GDP成長率は2%前後と伸び悩みました。また、個人消費も拡大しませんでした。そのため、小さな好景気であったと言えます。

リーマンショック(2008年~2011年)

 そして、リーマンショックが起こりました。皆さんも記憶に残っているのではないでしょうか?

 これにより、実質GDP成長率は2008年でマイナス1.0%、2009年でマイナス5.5%を記録しました。また、非正規雇用に対する雇止めや派遣社員の派遣切りなどが行われました。

アベノミクス景気(2012年~2018年)

 当時の安倍晋三元首相が金融緩和、財政出動、成長戦略の3つを柱とした経済政策を打ち出しました。その結果、いざなみ景気に劣らない景気拡張期となりました。しかし、消費税増税により個人消費が低迷し、成長戦略も思うような効果は出ませんでした

令和経済(2019年~2023年現在)

 令和元年には消費税が10%に増税されましたが、政府はキャッシュレス決済に伴うポイント還元などの政策を実施しました。令和2年には新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府は一律10万円の給付や企業に対する雇用調整助成金の拡充を内容とする緊急経済対策を実施しました。令和3年は新型コロナウイルスへの対応に追われる1年となりました。

 令和4年になると、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、世界では歴史的なインフレーションとなりました。日本は32年ぶりの円安でした。そして、令和5年は、OFCDによると、世界の実質経済成長率が2.6%に引き上げられると予測されています。

失われた30年で「何が」失われたのか?

著しい経済成長が失われた!

 バブル経済になる前の日本は高度経済成長期を迎えていました。1988年の時点で日本の実質GDP成長率は6.79%でした。しかし、バブル経済崩壊後の1992年では0.85%、1993年はマイナス0.52%となりました。

 その後、いざなみ景気によって3.13%まで上昇しましたが、リーマンショックを受けてマイナス5.69%まで下がりました。アベノミクス景気によりマイナス成長はプラスに転じましたが、2022年の時点での成長率は1.75%でした。

 これらの数字を見ると、高度経済成長期のような著しい経済成長はなくなり、低成長を続けていることがわかりますね。

*実質GDP成長率はSNA(国民経済計算マニュアル)に基づいたデータです。

労働人口が減少した!

 日本で少子高齢化が著しく進んでいます。高齢化率は上がっていく一方で、生産年齢人口と呼ばれる15~64歳は1995年をピークに減少しています。生産年齢人口の減少により、労働人口も確実に減少しています

消費者の消費行動が縮小した!

 失われた30年の間、消費税は3%から5%、8%、10%にまで上がりました。増税すれば日用品などの値段も上がるため、国民の消費行動は縮小されていきます。

 ただ、消費行動の縮小の原因は消費増税だけではありません。それは不況と将来に対する不安です。平成不況などの不況が続くと、将来の日本に対して悲観的になります。経済成長は見込めず、財政赤字は莫大で、労働人口も減っているとなれば、日本に対して不安が増えていきます。そうすると、消費者はなるべく貯蓄や節約をしようと考えるようになり、消費行動が縮小していくと言えます。

失われた30年の「戦犯」は誰なのか?

では、失われた30年の「戦犯」は誰なのでしょうか?

 政府の緊縮政策により国民の消費行動は抑制され、それが不況につながったと言えます。あるいは、オイルショックやリーマンショックなど世界経済が日本に影響を与えたことによって日本の経済成長が阻害されているとも言えます。そして、消費者自身が消費を渋り、貯蓄や節約行動に出たことも経済成長の障害の1つになっています。

 したがって、ここで「戦犯」を特定することは困難です。政府の政策、日本銀行による金融政策、消費者行動、世界の情勢などが複合的な原因となっているためです。

画像

日本の未来はどうなる?

 この記事では失われた30年について見てきました。

 ・失われた30年とは、バブル経済崩壊後の1990年代初頭から2020年代初頭を言う。

 ・失われたのは、「著しい経済成長」、「労働人口」、「積極的な消費者行動」など。

 ・戦犯は、政府・日本銀行、世界経済、消費者など複合的である。

 これからの日本は失われた40年への道を進むのか、それとも回復して経済成長を遂げるのか。日本政府の政策によるところもありますが、私たち1人1人の消費行動も影響を与えていることを考える必要があります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です